懺悔
2005年6月9日本来、木曜日にある家庭教師のバイトは電車で遠くD市まで行きます。今日も地元A駅でいつもの時間の電車に乗り、バイト先に向かっていました。すると、車中でマナーモードの携帯が振動し、バイト先のお母様からの電話でした。
何か嫌な予感がしますね。お母様の話によると・・・・生徒の通う中学校で事件が起き、今から全校生徒と保護者が集められて緊急の集会が開かれるので、今日の授業は中止ということでお願いします・・・・とのことでした。
既に私が電車に乗ってしまっていることは先方もご存知ですが、こういう事情なら仕方ないですね。今回の分の交通費は必ずお支払いしますとおっしゃっていただいて(当然のことですが)、それはそうと何の事件なのか気になります。
これから保護者まで呼んで緊急集会を開くということで、少なくとも避難を要するような不審者乱入殺人事件などではないことは明らかですが。まあ、変なことを想像するときりがありませんので、後で生徒やお母様から話を聞くまでは考えないようにしておきます。
さて、事件のことはともかく、電車の中でキャンセルの連絡を受けた私はどうするでしょうか。
まず、地元A駅では目的地D駅までの切符(570円)を買いました。そして、連絡を受けた直後の途中C駅で降りました。途中C駅から地元A駅までの運賃は320円です。
1:降りたC駅で改札を出て、新たに320円の切符を買ってA駅へ帰る。
2:降りたC駅では改札を出ず、A駅の直前B駅まで戻ってから改札を出る。そこで140円の切符を買い直してA駅へ帰る。
JRの規則に従えば1のようにやらなければいけませんね。もちろん私もお母様には1として交通費890円の請求をさせていただきます。そうでないと逆に人格を疑われますので。しかし、少しずる賢く2のようにすれば180円を節約できますね。
それでは私は2を選択したかといえば、そうではありません。連絡後に途中下車したC駅で改札を出ず、そのまま一気にA駅まで戻りました。以下はA駅での私と駅員さんの会話です。
私:「あの、すみません。(570円の切符を見せながら)これでD駅まで行くつもりだったんですけど、急に行く予定の用事が流れてしまいまして、このまま入場券代わりに出てしまってもよろしいでしょうか。(この時点で私は320円を節約するつもり)」
駅員:「まだ電車には乗っていないんですよね?」
私:「はい、まだです。(そこで取引は終了のつもり)」
駅員:「(電卓で570−130=440と計算)それでは、入場券ということで440円をお返し致します。」
私:「(えっ、ラッキー!)あっ、すみません。ありがとうございます。」
そういうわけで、もはや諦めていた最初の570円からも返金があり、ついに760円を節約できました。後日、お母様から正規の890円をいただいた時点で760円の収入になります。さらに、「いいえ、先生には申し訳ないですから、普段通りの往復1,140円としてお支払いします。」などと言われれば、1,010円の収入になります。実際、後者の可能性のほうが高いとは思いますが。
確かに、どんな事情があったとしても結果的に私は多大な無駄時間を過ごすことになりましたので、交通費の実費だけをいただいて済む問題ではありません。かといって、その辺のことを顕に言ってしまえば、それはそれで角が立ちます。本当に難しいです。
しかし・・・・しかしですよ・・・・私の犯したことは、一個人のやり取りとは全く無関係なはずのJRに対しては詐欺行為以外の何物でもありません。身勝手な価値観に基く詐欺行為で一企業に損害を与え、しかも不正から得た幸運に一瞬たりとも喜びの感情を抱いてしまった私は、もはや「医は仁術」などと奇麗事を述べられる立場にありません。だからといって今から警察に出頭する勇気はありませんし、医師国家試験の受験を辞退するだけの倫理観もありません。
今回の件は金銭による数値化をできる犯罪行為ですが、これに限らず私は理性による支配の内外で無数の罪を犯しているはずです。それでも今となっては医師を目指さざるを得ないという矛盾を解決するものはあるのでしょうか。
これから研修希望病院の選考試験で、「あなたが医師を目指した動機は何ですか?」などと問われることは十分に予想されます。きっと面接官の前では無難な回答で上手く切り抜けてしまうのでしょうが、そんな自分がいざ患者様の前で本心から真正面に向き合えるのだろうかと、今日の詐欺体験は終生忘れえぬ暗闇として燻り続けるものかも知れません。
何か嫌な予感がしますね。お母様の話によると・・・・生徒の通う中学校で事件が起き、今から全校生徒と保護者が集められて緊急の集会が開かれるので、今日の授業は中止ということでお願いします・・・・とのことでした。
既に私が電車に乗ってしまっていることは先方もご存知ですが、こういう事情なら仕方ないですね。今回の分の交通費は必ずお支払いしますとおっしゃっていただいて(当然のことですが)、それはそうと何の事件なのか気になります。
これから保護者まで呼んで緊急集会を開くということで、少なくとも避難を要するような不審者乱入殺人事件などではないことは明らかですが。まあ、変なことを想像するときりがありませんので、後で生徒やお母様から話を聞くまでは考えないようにしておきます。
さて、事件のことはともかく、電車の中でキャンセルの連絡を受けた私はどうするでしょうか。
まず、地元A駅では目的地D駅までの切符(570円)を買いました。そして、連絡を受けた直後の途中C駅で降りました。途中C駅から地元A駅までの運賃は320円です。
1:降りたC駅で改札を出て、新たに320円の切符を買ってA駅へ帰る。
2:降りたC駅では改札を出ず、A駅の直前B駅まで戻ってから改札を出る。そこで140円の切符を買い直してA駅へ帰る。
JRの規則に従えば1のようにやらなければいけませんね。もちろん私もお母様には1として交通費890円の請求をさせていただきます。そうでないと逆に人格を疑われますので。しかし、少しずる賢く2のようにすれば180円を節約できますね。
それでは私は2を選択したかといえば、そうではありません。連絡後に途中下車したC駅で改札を出ず、そのまま一気にA駅まで戻りました。以下はA駅での私と駅員さんの会話です。
私:「あの、すみません。(570円の切符を見せながら)これでD駅まで行くつもりだったんですけど、急に行く予定の用事が流れてしまいまして、このまま入場券代わりに出てしまってもよろしいでしょうか。(この時点で私は320円を節約するつもり)」
駅員:「まだ電車には乗っていないんですよね?」
私:「はい、まだです。(そこで取引は終了のつもり)」
駅員:「(電卓で570−130=440と計算)それでは、入場券ということで440円をお返し致します。」
私:「(えっ、ラッキー!)あっ、すみません。ありがとうございます。」
そういうわけで、もはや諦めていた最初の570円からも返金があり、ついに760円を節約できました。後日、お母様から正規の890円をいただいた時点で760円の収入になります。さらに、「いいえ、先生には申し訳ないですから、普段通りの往復1,140円としてお支払いします。」などと言われれば、1,010円の収入になります。実際、後者の可能性のほうが高いとは思いますが。
確かに、どんな事情があったとしても結果的に私は多大な無駄時間を過ごすことになりましたので、交通費の実費だけをいただいて済む問題ではありません。かといって、その辺のことを顕に言ってしまえば、それはそれで角が立ちます。本当に難しいです。
しかし・・・・しかしですよ・・・・私の犯したことは、一個人のやり取りとは全く無関係なはずのJRに対しては詐欺行為以外の何物でもありません。身勝手な価値観に基く詐欺行為で一企業に損害を与え、しかも不正から得た幸運に一瞬たりとも喜びの感情を抱いてしまった私は、もはや「医は仁術」などと奇麗事を述べられる立場にありません。だからといって今から警察に出頭する勇気はありませんし、医師国家試験の受験を辞退するだけの倫理観もありません。
今回の件は金銭による数値化をできる犯罪行為ですが、これに限らず私は理性による支配の内外で無数の罪を犯しているはずです。それでも今となっては医師を目指さざるを得ないという矛盾を解決するものはあるのでしょうか。
これから研修希望病院の選考試験で、「あなたが医師を目指した動機は何ですか?」などと問われることは十分に予想されます。きっと面接官の前では無難な回答で上手く切り抜けてしまうのでしょうが、そんな自分がいざ患者様の前で本心から真正面に向き合えるのだろうかと、今日の詐欺体験は終生忘れえぬ暗闇として燻り続けるものかも知れません。
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